ワインの王様・ボルドー(5)
意外と知らないボルドーワイン関連の知識
今回は、ボルドーワイン周辺のことについて二つほど書きます。
1.「ボルドー」が指す範囲
行政区画(市、コミューン)としてのボルドーと、ワイン産地としてのボルドーは、指している範囲が大きく異なります。
福岡市の姉妹都市であるボルドー市はありますが、ボルドー県はありません。ボルドー市のある県の名前は「ジロンド県」と言います。
ワインの産地について言う「ボルドー」は「ボルドー市も含めたジロンド県全体」だそうです。
なので、ボルドー市から数十キロ離れたリブルヌ市周辺にある「サンテミリオン」も、同じジロンド県にあるのでボルドーワインを名乗れる、というわけです。
もっとも、サンテミリオンの場合は、AOCという規則に合格したものに限ってではありますが、独自に地区名をワイン生産地として名乗れます。
同様に、「メドック」や「グラーヴ」の全て、「アントル・ドゥ・メール」の大部分も、ボルドー市の外にあります。
そして、独自のAOCに合格したものだけが地区名をワイン生産地として名乗れます。
日本で例えるなら、神戸市はあるけど神戸県はなく、兵庫県の中に神戸市があって、明石とか西宮とか芦屋も神戸を名乗ろうと思えば名乗れるけれど、一定の規則に合格すれば明石や西宮や芦屋も名乗れる、といった感覚に近いでしょう。
2.ワインを語るうえで大事な「AOC」とは
AOCとは、フランス語でアペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ(Appellation d'Origine Contrôlée)と言い、日本語では「原産地呼称統制」と訳される制度です。
フランスの国家的制度なので、ブルゴーニュワインやローヌワインにも独自のAOCが規定されています。
多様な製法や品質を認定して保護する制度で、ワイン以外にもブランデー、ラム酒、チーズ、バターなどに適用されるそうです。
というか、歴史的にはブルーチーズの製造地域と製法を保護するために始まった議決が起源で、それを20世紀になって他の製品にも適用するべく法律を整備したという順番になります。
ワインに関しては、AOCを名乗る場合には、大原則として指定された地域内で栽培されたブドウを使わなければならないほか、使っていいブドウ品種などが決められているそうで、例えばAOCボルドーを名乗りたかったら使ってはいけない品種もあるそうです。
このほか、製法についても決められている場合があり、シャンパンにおける瓶内二次発酵などが相当します。
また、AOCは必ずしも固定的なものではなく、ボルドーワインに関しても21世紀になってから新たに四つの地区名AOCが誕生しています。
ブライ・コート・ド・ボルドー
カスティヨン・コート・ド・ボルドー
フラン・コート・ド・ボルドー
カディヤック・コート・ド・ボルドー
の四つです。資料によって「ブライ」「カスティヨン」「フラン」「カディヤック」の位置がばらばらなのが迷うところですが(当サイトはhttp://www.bordeaux.com/jpの表記を採用)。
ヴィンテージとしては2008年以降だそうで、熟成期間がさほど長くないため、そろそろ飲み頃のワインも多いようですね。