一回目ではボルドーワインでよく聞かれる「格付け」の話を、二回目ではワインの名前についている「シャトー」の話をしましたが、今回はワインに使われているブドウ品種の話をします。
一口にボルドーワインといっても、シャトーのある地区によって、植えてあるブドウの品種は異なります。
一応、地域全体の赤ワイン用ブドウ品種としては、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロー、カベルネ・フランなどが有名です。
この三品種、実は同じボルドーでも栽培する地域がかなりはっきり分かれているそうです。
この地域分けにはボルドー地方を流れる二つの川が関係しているので、まずその川の説明をした方がいいでしょう。
この地方には、南東部からガロンヌ川、東部からドルドーニュ川という二つの川が流れてまして、合流してジロンド川になり、北東に向けて大西洋に流れ込みます。
ジロンド川は川幅が3km以上と広く、実質的には海というか三角江に近いそうです。
ブドウ品種に話を戻すと、例えば、オー・メドック地区などのジロンド川~ガロンヌ川左岸地域では、カベルネ・ソーヴィニヨンがメインですが、これはこの品種が砂と小石の多い、水はけのいい土壌を好むためだそうです。
これに加えて、畑の土壌の違いや、味のブレンドの関係から、粘土質の土壌を好むメルローを幾らか混ぜるのがジロンド川左岸地域では一般的なようです。
ただし、メドックの南にあって、ガロンヌ川とドルドーニュ川との合流地点から距離のあるグラーヴ地区では、メルローがメインのようです。
このほか、マルベック、プティ・ヴェルドといった品種が少量使われています。
それに対し、ドルドーニュ川右岸地域では、メルローとカベルネ・フランが多く、特にメルローが中心だそうです。
とりわけドルドーニュ川と支流のイル川との合流地点付近にあるポムロール地区(シャトー・ペトリュスで有名)や、イル川対岸のフロンサック地区ではメルローがメインだそうです。
シャトーによってはカベルネ・ソーヴィニヨンを混ぜることもありますが、かなり少ないようです。
メドックやグラーヴで少量使われている品種は、ドルドーニュ川地域ではまず見かけません。
ただし、合流後のジロンド川になると、右岸地域でもマルベックを少量使うシャトーもあるそうです。
面白いのがカベルネ・フランで、紀元二世紀の古代ローマ帝国時代にワイン作りが始まっていて、ポムロールの東側にあるサンテミリオン地区では、この品種をメインに使ったワインも多く売られているそうです。
一方、この品種はジロンド川~ガロンヌ川左岸地域ではほとんど使用されません。例外として、サン・テステフ地区とサン・ジュリアン地区で少量植えられていますが、これは両地区の特殊な土壌が影響しているそうです。
一応、カベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランが交配してできた品種がカベルネ・ソーヴィニヨンなのですが、カベルネ・フランは水はけのよくない土地でも育つため、カベルネ・ソーヴィニヨンが育ちにくい土地で植えられているそうです。
ちなみに現在では、ボルドー全体で最も栽培面積が多い赤ワイン用の品種はメルローだそうです。