ボルドーワインを探していると、かなりの高確率で「シャトー」の文字を目にするのですが、名乗るには条件があるそうです。
その条件は、自分の畑で栽培されたブドウのみを使い、醸造・樽での貯蔵・瓶詰めまで自分のところで行うこと、だそうです。
要するに「うちで作りました」と身元を名乗れる自信のあるワイン、ということです。
このため、高級なシャトーになると、ブドウが不作で良いワインが作れないときには、シャトーを名乗るワインを作らないこともあります。
最近では、高級甘口ワイン(貴腐ワイン)の生産者「シャトー・ディケム」が2012年のヴィンテージ(ブドウの生産年)のものを作らないと発表したことで話題になりました。
五大シャトーの一つである「シャトー・ムートン・ロートシルト」が作っている別ブランドワイン、「ムートン・カデ」が生まれたのも、きっかけはブドウの不作でした。
1930年のブドウが不作だったので、「シャトー」を名乗るワインを作ることを諦めた当時の当主が、代わりにと作ったのが「ムートン・カデ」だったというわけです。
ボルドーの場合、一つのブドウ畑を一つのシャトーが所有しているのが一般的です。
普通、一つのシャトーが所有している畑は10ヘクタール前後はある(例外的にサンテミリオン地区では4ヘクタール前後)ので、他の畑を所有する必要性に乏しいのでしょう。
シャトー・ディケムのように100ヘクタールの畑を持っているところもあります。
逆に、格付けワインのひしめくメドック地域で6ヘクタール以下のブドウ畑しか持っていない、本当に家族経営のシャトーには、それ専門の格付けがあるほどです。
ただし、同じ経営者が複数のシャトーを持つことはあるそうで、中には17ものシャトーを所有している企業もありますが、そういう場合でもシャトーごとにワインが作られて出荷されるそうです。
このように、ボルドーにもワインの流通・販売業者であるネゴシアンはいますが、他の地方とは違ってワインの製造は既存ワインのブレンドか、自社の所有する畑のブドウの醸造、更にはシャトーごと所有・経営して、シャトーの名前で出荷するスタイルが多いです。
他の地方で一般的な、別人所有の畑で作られたブドウを買い入れての醸造は、ほとんど行わないそうです。
上述の「ムートン・カデ」が21世紀になってブドウを買い入れて醸造することを始めた(その前は他社と同様、既存ワインをブレンドしていた)そうですが、それも例外でしょう。
ちなみにこの「ムートン・カデ」は、カンヌ映画祭の公式ワインだそうです。
こうした経緯から、ボルドーのネゴシアンものは低く見られがちですが、美味しくてコストパフォーマンスの高いワインもあるとして、近年再評価が進んで来ています。
シャトーがついてなくても美味しいワインがあると心の片隅にでも置いておいてくれれば、ワイン選びの幅が広がると思います。
このコラムは脳性まひによる肢体不自由なプチ・マリアさんがパソコンを活用し不定期ですがいろいろな情報を連載しています。
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