スパークリングワインにまつわるあれこれ(1)
シャンパン製法の発明まで
クリスマスのパーティなどで飲まれ、普段は夏に人気があるとされるスパークリングワイン。
シャンパンが有名ですが、実はスパークリングワイン自体には「決まった製法はない」のです。
例えば、いつ炭酸ガスを入れるかはワイン生産者ごとの自由で、極端な話、出荷直前に入れてもOKです。
もともと17世紀、自国ではブドウが育たないイギリスで、発泡していない普通のワイン(ステイルワインと言います)を輸入して、現地で人工的に発泡させて飲むことが流行っていたのがきっかけとされ、これを知ったフランスでも飲むようになったとされているからでしょう。
当時まではワインの輸出も樽でなされ、衛生状態の悪さも相まって余り熟成させずに飲むものだったようですが、17世紀前半には消費地での瓶詰めがイギリスで行われるようになり、同じ世紀の後半には瓶で長期保存・熟成する技術が発達したのが、シャンパンの発明に決定的な役割を果たしたようです。
樽では発酵中に発生した二酸化炭素が外に抜けてしまいますから、ワインの中に取り込んで長期保存するためには瓶が必要でした。
現在ではタンク内で二次発酵する製法(シャルマ方式)などもあり、フランスではスパークリングワインの総称として「ヴァン・ムスー」という呼び方があるそうです。
なお、スパークリングワインの名前に含まれているセックとかブリュット(Brut、フランス語でも最後のtを発音する)というのは、スパークリングワイン製造の最終段階(出荷直前)で加えられる糖分の量で決まるそうで、セックよりブリュットの方が少ない(つまり、より辛口)のようです。
さて、スパークリングワインの代名詞ともなっているシャンパンですが、実は「フランスのシャンパーニュ地方で生産されたスパークリングワイン」のことで、他地方、他国産のスパークリングワインはシャンパンを名乗ってはいけません。
シャンパンは作り方も独特で、「瓶内二次発酵」という過程を経ることが最近になって小売店の店頭のPOPにも書かれるようになり、有名になりつつあります。
この「瓶内(二次)発酵」が発見されたのは、フランス北部のシャンパーニュ地方のある修道院で、実際には偶然の産物に近かったようです。
まだ発酵が終わっていなかったワインを瓶詰めして放置していたら、瓶内でも発酵が進んで発泡していたのを係りの修道士が発見したのがきっかけだったそうですから。
その修道士の名前こそが「ドン・ペリニヨン」。盲目だったと伝えられています。
今となっては超高級シャンパンの名前として有名ですが、シャンパンの発明者にちなんだ名前なんですね。
彼は1638年に生まれて1715年に死んだそうで、この現象を発見した後はずっとシャンパンの品質改良のための研究に取り組んだと言われています。
恐らく、ワインの醸造元での瓶詰めが始まってそれほど間がない時期に、瓶内で発酵が進むという事象に遭遇したと思われます。
シャンパーニュ地方は寒いので、冬は酵母が冬眠してブドウの発酵が止まることがあるそうで、春になって暖かくなると冬眠をやめて発酵を再開することがあるそうです。
冬に発酵が止まっているうちに瓶詰めしたとすれば、当時はまだ、ブドウの発酵が終わったかどうかの判断が不確実だったのかも知れません。
なお、シャンパンが売り物として市場に出てくるのは、ドン・ペリニヨン修道士の死後、さほど間がない時期のようです。