ブルゴーニュワイン(1)まずは畑について知ろう(後編)
前回、ブルゴーニュワインにおける畑の重要性について書きましたが、畑というのは言うまでもなく土地ですから、分割できます。
フランス革命で、修道院や教会・貴族の所有地であったブドウ畑は、当時の政府によって没収されました。
コンティ公が買った畑や、その隣のサン・ヴィヴァン修道院の畑も、このとき没収されています。
その後、競売にかけられたこれらの畑の多くは、ブルゴーニュではそのままでは大きすぎる(売値が高すぎる)として買い手がなく、数ヘクタールずつに分割して売られました。
コンティ公のものだった畑はさほど大きくなかった(約1.8ヘクタール)ことが幸いしてか、単独所有となり、コンティの名前も残ったまま、今に至っていますが…。
よそでは、同じ畑を複数の生産者が所有するようになり、相続(ナポレオン法典で均等相続が明文化されたことも一因のようです)や売却などでさらに細分化。今では特級畑などでは、一つの畑の所有者が数十人いることも珍しくないそうです。
むしろ、単独所有の畑には「モノポール」と注意書きがしてあるほど、分割所有が一般化しています。
こうなってくると、同じ畑でも区画の所有者(生産者)ごとに品質の差が出てきます。
ブルゴーニュワインでは生産者が大事と言われるのは、こうした事情もあります。
こうした分割所有は、一つの畑だけではやっていけない生産者を多く生むことになりました。何しろ一区画が一ヘクタールに満たないことも珍しくないのですから。
そこで他の村や地区にも畑を持つようになり、その中の一部がネゴシアン、つまり他人の畑のブドウを買い取ってワインを醸造したり、ワインをブレンドして新しいワインを作ったり、ワインの流通に関わったりする企業になっていったと言われています。
ネゴシアンに関してはワインの流通業者として始まった企業もありますが、近年では自らブドウ畑を所有するところも増えてきていて、「特級畑」や「一級畑」になると、畑と企業の名前が併記されて売られます。
こうした企業のことを、「ネゴシアンでありドメーヌでもある」という言い方をします。
ドメーヌとは、ボルドーで言うシャトーにほぼ相当し、元は自分が持つブドウ畑の「区画」を指していましたが、「自分の畑で取れたブドウを使ってワインを醸造し、瓶詰めし、出荷する」生産者もさします。
上記のとおり、複数の区画でワインを作っている生産者も多いです。
例えば、ロマネ・コンティを生産している企業は「ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ」という会社ですが、他の畑の区画も所有もしくは貸借し、それぞれの畑の名前でワインを醸造しています。
他に、日本で有名なブルゴーニュワインのネゴシアンの例としてはルイ・ジャド社がありますが、自社でも150ヘクタールもの畑を持ってワインの醸造を行うドメーヌで、他のドメーヌの買収などで拡大したこともあり、ワインには元のドメーヌ名が書かれています。
150ヘクタールと言っても、畑の場所はあちこち(25カ所以上)に分散していて、例えばシャトー・ラフィット・ロートシルトのように一カ所に123ヘクタールもの広大な土地を有しているわけではないです。
もちろんルイ・ジャド社のような例は少なく、ボルドーワインの生産者が広いブドウ畑に立派なシャトーを構えて貴族のような印象を与えるのに対し、多くのブルゴーニュワインの生産者は農民のような印象があるそうです。
このため、「ボルドーは貴族制、ブルゴーニュは民主制」と言われることもあるそうで、この地方の特徴の一つを表していると思います。