ブルゴーニュワイン(4)
白ワイン向けの品種について
ブルゴーニュ地方では、シャルドネが白ワインの代表的品種として育てられています。
シャブリは基本的にシャルドネのみですし、ピュリニー/シャサーニュの両モンラッシェ村、ムルソー、プィイ・フュイッセなどの高級白ワインが、シャルドネを使って作られています。
以前も書きましたが、ブルゴーニュワイン全体では白ワインの方が生産量が多いほどなので、シャルドネの植えられている面積も広いです。
シャルドネ自体は「白いご飯」に例えられるほど個性というか癖がないのですが、ピノ系品種だけあって生育環境に左右されやすいです。
具体的には、ピノ系品種とクロアチア原産の絶滅した品種との交配種で、他のピノ系品種、特にピノ・ブランと混同されていた時期が長かったようです。
ブルゴーニュ地方南部の、白ワインで有名なマコネ地区にシャルドネという名前の村があるそうで、ここでブドウ品種としてのシャルドネが生まれた可能性が高いです。
このシャルドネ、春の遅霜では枯死することもあるそうで、決して強い品種ではありません。
そのため、北の冷涼な気候を持つシャンパーニュ地方やブルゴーニュ地方北部では、芽吹いた後で急に寒くなりそうな時には、畑にストーブを持ち込むことすらあるそうです。
ブルゴーニュでは、基本的にハーブのような香りと酸味を持ったワインが作られていますが、環境によって味が変わります。
例えば、シャブリが何故、ミネラル系のキレのある白の辛口に仕上がっているかというと、ブルゴーニュでも最北にある地域(パリを流れるセーヌ川の上流にある地域です)の上、土壌がキメリジャンという、粘土質の層と小石と砂が混じった石灰質の層が相互に積み重なり、おまけに無数の貝殻まである地層だからで、そこからミネラルを吸い上げているそうです。
このほか、オーク材の樽を使うか使わないかで香りや味がかなり変わってくるそうで、香りに関してはココナッツやバターからバニラやキャラメル、スモーク香といったものまであります。
この効果を得たい、なおかつ値段を下げたい場合は発酵中にオーク材のチップを入れることもあるそうです。
コクがあって酸味の少ないワインが好きならカリフォルニアなど、オーク材で熟成したものの方がいいようです。
シャルドネに癖がないのも善し悪しで、ワイン愛好家からは敬遠されることもあります。けれども一般の人からの人気はあり、ブルゴーニュやシャンパーニュ以外でも世界中のあちこちで栽培されています。
その結果、栽培面積も世界上位で、ソーヴィニヨン・ブランやリースリングと並んで「三大白ワイン品種」とされています。
ブルゴーニュでは基本的にはコクのあるワインに仕上がり、料理方法次第では豚肉にも合うそうです。
また、ブルゴーニュではアリゴテという品種を使った白ワインもあり、1998年に村名AOCに昇格した「ブーズロン」が「アリゴテのみを使った白ワインでは唯一、村名AOCを名乗れるワイン」となりました。
ただし、他の地域でもアリゴテのみの白ワインはあり、「ブルゴーニュ・アリゴテ」という名前で売られています。
ブドウとしてはかなり丈夫な方だそうで、品種としてはシャルドネより歴史(別の品種として認識された歴史)が古く、生育に関してはシャルドネより早熟です。
ワインとしては、基本的には軽くてフレッシュな、酸味の強いものになるそうですが、最近の醸造技術の向上もあってその範囲に留まらない、美味しいワインも増えてきているようです。
カクテルを飲まれる方は「キール」というのをご存知かもしれませんが、それに使われる白ワインが本来はこのアリゴテで作られたものだそうです。
アリゴテは一級畑に植えられていることもあり、当然ながら固有のAOCで売られています。
もちろん、シャルドネと混ぜて使われることも多いです。
価格はシャルドネより安い場合が多いそうなので、興味があれば飲まれてみてもいいと思います。
最後に。実は日本では余り知られていませんが、ブルゴーニュでもたった一つだけ、ソーヴィニヨン・ブランで白ワインを作ってAOC認定されている地区があります。
AOC名はサン・ブリと言い、2003年認定で、シャブリと同じブルゴーニュ地方最北のヨンヌ県にありますが、シャブリより西側です。
この地区はロワール川流域から数十キロメートルと比較的近く、そのロワール川流域では白ワイン用品種としてソーヴィニヨン・ブランも使われていることが影響したのかもしれません。
シャブリと近いためか土壌もシャブリと似ており、キメリジャンを多く含んでいるそうですが、シャブリほどミネラル感は強くなく、軽い味わいになるようで、ここがソーヴィニヨン・ブランという品種の特徴でしょうか。
シャブリとサン・ブリ、シャルドネとソーヴィニヨン・ブランを飲み比べてみるには、最適の地区かもしれません。